東海大相模-仙台育英

今年の夏の甲子園決勝戦は近年稀に見る好ゲームだったと思う。

それは点差や展開やレベルは勿論のこと「仙台育英がここまで頑張るとは思わなかった」という個人的に予想外の展開だったからだ。

 

優勝した東海大相模は大会前から優勝候補の大本命と目されていた。

今年のドラフトの目玉の1人になるであろう、左腕エース小笠原と強烈なスライダーを決め球に持つ右腕吉田のWエース。打線も上位から下位までムラなく、激戦の神奈川大会決勝で横浜高校に9-0と圧勝。甲子園の組み合わせ抽選では2回戦から登場という籤運にも恵まれた。

個人的に少し気がかりだったのが、予選から甲子園を通して殆ど接戦を経験していなかった事。しかし準々決勝の花咲徳栄戦で、あわやと言う試合を4-3でモノにし、これで優勝へのお膳立ては整ったのではないかと思っていた。

 

一方の仙台育英は去年秋の神宮大会王者。

エースの佐藤世那はセンバツ時よりも明らかにストレートにボリュームが増しフォークの精度も上がっていた。さらに、恐らくこちらもドラフト指名されるであろうショートの平沢や、花巻東の佐々木監督が「すごいキャッチャー」と評していた郡司など野手にもタレントを揃える。

しかしこちらは東海大相模と違い、1回戦からの登場。ただでさえ日程的に不利な上に、こちらはエースと2番手投手との力量差が大きく消耗度の違いは明らかなように思えた。

万が一雨天順延で1日日程が空けば、佐藤世那の回復次第で仙台育英にも勝ち目は出てくるだろう。しかし、予定通りに決勝戦が開催されれば思わぬ大差もあるかもしれない、と私は予想していた。

 

そして始まった決勝戦。

解説の横浜高校前監督の渡辺氏が「相模が勝つなら5点勝負、仙台育英が勝つなら3点勝負だと思っていた」と語っていたように、私も6-3になった時点で勝負は決まったと思った。

ところが満塁走者一掃のタイムリーで6回裏に同点。その後の仙台育英の攻撃を後押しするような甲子園の大拍手は、彼らの優勝にかける執念とそれが乗り移ったひたむきなプレーに観客が魅了された証だったと思う。

 

最後は佐藤世那が力尽き、また最後の最後に集中力が欠けたような守備が出てしまったのは残念だったが、万全に近い状態であっただろう小笠原から6点をもぎ取り、優勝候補の大本命をあと一歩まで追い詰めた戦いぶりは見事だった。この仙台育英の戦いぶりを見た子供達が彼らの想いを引き継ぎ、東北に深紅の大優勝旗を運んでくれるだろう。近年の東北勢の躍進を見ても、その時はもうすぐだ。

 

一方の東海大相模は「優勝候補の大本命」というプレッシャーに打ち克ち、狙って獲った優勝という点に大きな価値がある。昨年まさかの初戦敗退に終わった悔しさを知る選手達が残り、投手層の厚さでも群を抜き、監督の采配や選手のプレーぶりを見ていても「今年こそは」という執念が感じられた。

一度は球場の雰囲気も含めて、完全に仙台育英ペースになりかけた試合を踏ん張り、最後は自分の一振りで試合を決めてしまった小笠原は見事としか言いようがない。投手としての資質はもちろん、ドラフト1位選手に相応しいスター性を決勝戦という大舞台で見せつけた。