『黄金のアデーレ 名画の帰還』


黄金のアデーレ 名画の帰還 予告編 - YouTube

 

あらすじ

アメリカ在住の82歳のマリア・アルトマン(ヘレン・ミレン)は、グスタフ・クリムトが描いた伯母の肖像画で第2次世界大戦ナチスに奪われた名画が、オーストリアにあることを知る。彼女は新米弁護士ランディ(ライアン・レイノルズ)の助けを借り、オーストリア政府に絵画の返還を求めて訴訟を起こす。法廷闘争の一方、マリアは自身の半生を振り返り……。

 

 

 

 

65点

 

 

 

「期待以上でも期待以下でもなく・・」

 

まあこの映画は、クリムト(アデーレの肖像画)力に救われた部分は大きいと思います。美術に造詣の浅い私でも、純粋にこの絵画は「す、すげえ」と思いましたよね。アデーレの肖像画を観客に印象付ける事が目的だったのだとすれば、製作者側の意図は十分すぎるほど達成されているのではないでしょうか。

 

あとは、挿入で度々用いられる過去シーンの編集も上手でしたね。アデーレの存在に代表される華やかな時代と、ナチス占領以降の苦難の時代の対比。そして少しずつ明らかになる、マリアが故郷を捨てざるを得なかった理由とその過程。現代のシーンと過去のシーンのバランス、謎が明らかになっていくタイミングも見事だったと思います。

 

 

一方で疑問に思ったのが「アデーレは本当にこういう結末を望んでいたのだろうか?」ということ。

会話の中でも出てきますけど、マリアはこの肖像画を取り戻したところで自分の家に飾る事が出来る訳でもなく、結局アメリカの美術館で展示する事になるんですよね。それならオーストリアに飾ったままでも良かったんじゃないの?と。

 

マリアにとっても、政府やナチスに対する恨みはあっても、オーストリアは楽しい思い出のある懐かしの地でもあるわけじゃないですか。アデーレの肖像画が多くの人々に愛されているのは事実な訳だから、画を通して故郷との繋がりを感じる、そういう思考回路にはならなかったのかなあ。

 

もちろん収奪された美術品を未だに政府が管理し、それを利用して商売をしている事に対する怒りは理解できますよ。でもそれと、アデーレにとっては縁もゆかりも無いアメリカに肖像画を持ってくるという事は、目的と手段が一致していないというか。釈然としない気持ちも残りました。

 

 

あと、アンナがアメリカに渡ってからの苦労をもう少し描くべきじゃないかなあと。

あまり流行っていなさそうなブティックを細々と経営しているという現状はわかるんですけど(その割に身なりはいつも小奇麗だし、家も結構広そうだし)、苦労した末の今があるという感じが伝わってこないというか。特に命からがら逃げ出してきた夫という物語上重要な役割を担う存在もいるわけですから、彼女たちがアメリカでどんな困難に立ち向かってきたかの描写があっても良かった気がします。

 

 

ナチスの占領と美術品の収奪という「ミケランジェロ・プロジェクト」と似たテーマでしたが、作品の完成度と美術品の描き方の鮮やかさという点で、こちらの方が遥かに良かったですね。腑に落ちないところもありましたけど、私もアデーレに会いに行きたくなりました。