『ザ・ウォーク (3D・字幕版)』


映画『ザ・ウォーク』新予告映像

 

あらすじ

1974年。フランス人の大道芸人フィリップ・プティジョセフ・ゴードン=レヴィット)は、誰も考えついたことのない挑戦をすることに。それはニューヨークのマンハッタンにそびえ立つ2棟構造の高層ビル、ワールド・トレード・センターの屋上と屋上の間にワイヤーロープを張って命綱なしで渡っていくというものだった。そして、ついに決行の日を迎えるフィリップ。地上110階の高さに浮いているワイヤーを、一歩、また一歩と進んでいく彼だったが……。

 

 

 

65点

 

 

 

昨年の夏ぐらいからですかね。劇場に行くたびに、この作品の予告をイヤというほど見せられていまして。町山智浩さんが『たまむすび』の紹介の中で3D映画が発明された過程、今作や『エベレスト3D』などを引き合いに出されて「製作者側もようやく3Dに適する映画の作り方を分かってきた!」というような話をされていたのを聞いて、少し楽しみにしてたんですよ。でもね、個人的には「不完全燃焼!」。

 

もうクライマックスがどういうシーンなのかは分かりきってるじゃないですか。問題は、終着点までどう展開させていくのかと、肝心のビルを渡るシーンの長さと質ですよね。その点から鑑みれば「どちらも中途半端だなあ」というのが率直な感想。

 

まず、ビルを渡るためにアメリカで本格的に行動するまでのシーンが長すぎる。「もうさっさとビル渡れや!」と。おそらく、ただの3Dのための映画にしたくなかったでしょう。それは製作者として当然の考えだと思う。ただ色んな要素を盛り込んだ結果、全部が中途半端になってるんじゃないかなあ。

 

WTCに挑戦するまでの要素として覚えているだけでも

①フィリップがなぜ綱渡りに心惹かれるようになったか(およびその生い立ち)

②ルディ(シャルロット・ルボン)との恋愛要素や仲間の加入

③フィリップの綱渡り技術が向上していく過程

④アメリカに渡ってからの下調べ

⑤アメリカでの協力者探し

⑥実際のビルでの下準備

 

まあ⑥は外せないとしても、他の要素を半分ぐらいにしてより深く掘り下げて描くべきだったんじゃないかと思います。だから話が進めば進むほど、周りの人々がそれほどフィリップに惹かれる、協力的になるという展開が飲み込み辛い。

 

 例えば3D技術を生かすなら、もっと綱渡りの修行のシーンを徹底的に描くべきだと思う。簡単な沼渡りですら失敗してた人間が、いきなりノートルダム寺院だとか、今度はWTCだとか、話が飛躍しすぎ。だからフィリップがこの夢を叶える為にどれだけの犠牲と労力を払ってきたのかという点が非常に見え辛い。(そもそもあんな頑固な師匠が本物の弟子でもない人間に簡単に免許皆伝するわけない)

 

素敵な彼女のルディにしても、どこまで本気でフィリップの事を思っているのか分からない。出会ってすぐ恋に落ちるほど魅力的な人物なら、彼の命を心配するのが普通の感情じゃないの?でも途中までは、フィリップよりもむしろルディの方がノリノリにすら見えるという。理解しがたい感情でしたな。

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このシーンとかとても魅力的だったとは思うけどね・・

 

アメリカに渡ってからのシーンは全体的に良かった。

フィリップが様々に変装してビルに紛れ込んでいく様子は楽しかったし、実際に準備を実行するシーンも好き。特にビルに潜入した後、警備員に見つかりそうになって梁に跨ってやり過ごすシーンは良かった。その直前にドラッグ中毒の仲間が急に騒ぎ出すとこはマジぶん殴ってやりたくなったけど、ヘルメットが果てしなく落ちていくのとか、高さに対する恐怖は綱渡り以上に描かれていたかもしれない。

 

そしていよいよクライマックス。

 

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 フィリップが一歩踏み出すと共に霧が晴れていく演出は素晴らしかった。

雲や霧も含めた自然と眼下に広がるニューヨークの街並みの、よく言えば人工的な悪く言えば猥雑な感じの対比も良かったし、 高さの描写も含めてさすがのスリル。一度成功して、再び向こうの棟に戻るまでは本当にハラハラしたし。

 

ただ、警察が登場してからの流れは少し不満。

まず言動を含めて警察がアホに描かれすぎ。「ひもから離れなさい」とかウケ狙いとしても面白くないし、はっきり言って不快。

それと予告編から察する限り、もっと気候や風との戦いなのかと思ってたんです。ところがそういう描写はあまり無くて、警察の手から逃れるために何度もロープの上を行き来したり「アナーキズム」がどうこうみたいな話もまで出てきてね。「え、そういう趣旨の話だったの?」と肩透かしを食らった気分。

 

パリで路上パフォーマンスをしている時に警察と云々という描写はありましたけど、

 急に警察無能!警察憎い!みたいな描写をされてもねえ・・。唐突で寒いと思いましたよ。

 

 見ていて面白い、凄いなと思うシーンも色々あったんですよ。でも全体的に人間ドラマとかチームのバディ感とか描き方が中途半端。おまけに最後には権力に対する主義主張まで織り込んできて「うん、面白いのはわかるけど結局あなた達は何が目的なの?」という心境。

 

主義主張といえば、フィリップが貰ったWTCの展望台に行けるチケットの有効期限は「永遠」であるとか、WTCの2つのビルに日が当たり「今は無きWTCビルを追悼する」ようなシーンがラストにあったりしました。

あれアメリカの人たちが見たら感動するんですかね?もちろんテロが無くなるに越した事はないし、犠牲になった人々は気の毒だとは思うけれど、そもそもそこに至るまでの過程や9・11以降アメリカがやってきた事を考えるとね・・。

 

 

という感じで、個人的には加点も多いけど減点も多い作品でしたねえ。

結構期待してただけに、どちらかと言えば残念な気持ちの方が強いかな。