『ブリッジ・オブ・スパイ』


スピルバーグ×トム・ハンクス『ブリッジ・オブ・スパイ』予告編

 

あらすじ

アメリカとソ連の冷戦のさなか、保険関連の敏腕弁護士ドノヴァン(トム・ハンクス)は、ソ連のスパイであるアベル(マーク・ライランス)の弁護を引き受ける。その後ドノヴァンの弁護により、アベルは死刑を免れ懲役刑となった。5年後、アメリカがソ連に送り込んだ偵察機が撃墜され、乗組員が捕獲される。ジェームズは、CIAから自分が弁護したアベルとアメリカ人乗組員のパワーズ(オースティン・ストウェル)の交換という任務を任され……。

 

 

 

90点

 

 

 

素晴らしい作品でした・・。

 

まず導入部分が素晴らしい。一見、老後の趣味で絵画を描いている男に見えるアベルの佇まいや表情。そこから一転、何の変哲もないコインに隠された秘密。(コインを開封する時の仕掛けや仕草もとても良い)FBIに突入され窮地に立たされながらも秘密を隠蔽するまでの流れ。

 

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ここまでで「これ絶対良い映画!(アタリダ!)」と確信。

 

 

そして、捕まったアベルを弁護するために呼ばれたドノヴァンを演じるトム・ハンクス。この作品に関しては、彼の演技は全てのシーンで全て100点と言っても良いんじゃないですかね。

電車内で他の乗客から敵意の眼差しを向けられた時の困惑した表情や、家族を愛する想いと、その家族や自らの生命を危険に晒してでも貫かなければならない自分の信念・・。

決して弁が立つとか器用な生き方が出来る訳ではないが、内面から滲み出る強さや無骨さみたいなものがトム・ハンクスとベストマッチしてましたよ。

 

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 「サーモンを釣りに行くんだ・・

って「もう少し上手な嘘つけやー!」と思いつつも、ドノヴァンの気持ちを考えても奥さんの気持ちを考えても、涙なしでは見られないシーン。

 

 

そしてスパイ交換の為に乗り込んでいく東ベルリンの描写も特筆もの。

検問所のシーンから始まり、屯してるヤンキーに絡まれながら高価なコートと交換にソ連大使館に辿り着いたものの、本当に会いたかった人物は一向に現れず・・

 

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この検問所のところとか

 

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このフェンスが途切れた先には悲劇が・・

 

一連のシーンでとても印象深かったのは大使館でのアベルの偽家族。

奥さんが、アベルとすぐには会えないと分かった瞬間号泣してドノヴァンの同情を誘いつつも、促されて部屋から退場する際にドノヴァンに背を向けた瞬間涙は全く流れてないというね。

次から次に約束していない人物が出てくる演出も含めて「こういう事って実際にあるんだろうなー」と妙に納得させられましたよ。

 

 

そして迎えるクライマックスの橋でのスパイ交換。ドノヴァンがアベルに「君はあちらに帰ったところで本当に歓迎されるのか?」と尋ねたところ「それは出迎え方でわかる」と答えてからの、アメリカ側とソ連側での全く異なる反応。しかもこれ見よがしに写すのではなく、あくまでアメリカ側から見た視点と背景で描くスマートさ。 

「最後まで大人の映画だなあ」と感服いたしました。

 

 

人を裁くのはあくまで法律であるべきで、それが出来ない国は法治国家だの先進国を名乗る権利は無いのです。ドノヴァンは弁護士として当たり前の事を守っただけ。でも今の日本で、その当たり前を意識している人々が果たしてどれだけいるでしょう。

感情論に押し流されて、またマスコミがそれを煽動して特定の人間に社会的制裁を加えるような事は本来あってはならない事で、例えばドノヴァンの電車の中でのシーンや自宅が襲われるシーンなどは日本も全く他人事ではないはずです。

 

また最初はあくまで職務上の関係性しか無かったドノヴァンとアベルの間に、タバコや絵画そして言葉の数々で通い始める心。国籍がどうのよりも、最後に大事なのはあくまで人と人との関係性なんだよなという事も再認識させられましたよ。

 

 

ラストシーン。

それまでドノヴァンの帰りを気にかけずテレビに夢中になっていた子供たち。ニュースを見て父親に驚きの眼差しを向けた時ドノヴァンの姿はそこに無く、 全ての力を使い果たしてベッドに倒れこむように眠りにつく。その背中を見守る妻。

理想の男であり父の姿がそこにはありました。