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『後妻業の女』

映画

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あらすじ:妻に先立たれた中瀬耕造(津川雅彦)は、婚活パーティーで年下の女性・小夜子(大竹しのぶ)と出会う。やがて病に倒れた耕造は他界し、後妻におさまった小夜子から公式証書遺言状を見せられた娘の中瀬朋美(尾野真千子)は、遺産は全て小夜子に渡り遺族には一切残らないと知らされる。父の死に疑念を抱く朋美は探偵の本多(永瀬正敏)を雇い、小夜子の身辺を調査するが……。

 

 

 

85点+劇場の雰囲気5点

 

 

 

原作者の黒川博行氏は大阪府立高校の元美術教師。私の職場にも「高校時代黒川先生から美術を教わっていた」という人がいたりして、何かと親近感を覚える存在。この映画の元になった「後妻業 」は、後に同様の事件が発覚した事もあり「未来を予言している」と話題になりましたよね。

 

どうしようもなくバカバカしくて笑えるんだけど、バカバカしいからこそ生まれる悲哀。幾つになっても治らない人間の愚かで本質的な部分、更に少子高齢化の現代だからこそ考えさせられる描写もあったりして実に良く出来たエンターテイメント作品だと思いましたよ。

 

よく関西弁は他地域の人から「いつも漫才をしているみたいに聞こえる」と揶揄される事もあるが、関西弁の持つ独特の「間」やニュアンスが本作では巧みに再現されている。その「間」は、沈黙やツッコミ、登場人物の表情、周囲の人々の視線など様々な形で表現されるが、これが本作の語り口をリズミカルなものにしていると思う。

 

個人的には、地方を舞台にした作品はしばしば「その描き方はどうなの?」と疑問を感じてしまうモノも多い。本作はその部分を丁寧に描写・演出しただけでも偉いと思う。だからこそ登場人物たちに、あれだけの実在感が生まれたのだろう。そしてまさに「実在感」こそが、この作品の肝であると思う。本作の内容は「老い」というものに不可逆的な存在である以上、誰にとっても他人事では無いからだ。

 

平等に訪れる「老い」と、それに伴い感じる不安や孤独。その弱みに付け込む連中。残された遺族が抱える後悔の念や負い目。「男って幾つになってもバカだよなあ」と笑いながらも、同じ男として被害に遭った人達の気持ちも痛いほどわかるだけに何とも哀しい。また親と子という立場から考えると、果たして片親だけが残された時に孤独を感じさせないような接し方が出来るだろうか。

 

これほど色々と考えさせられ、現実を直視するとダウナーな気分になるにも関わらず、並行して笑いが持続するのがこの作品の素晴らしいところ。

 

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出演者は皆さん素晴らしかったけど、文句なしのMVPは最後まで美味しいところを持っていった大竹しのぶさん。尚子(長谷川京子)が自分に持ち合わせていないものを感じて彼女に軽く憧憬の念を示す、みたいな描写はさすがにどうかと思ったけど。でも彼女が絡むシーンの大半はシリアスなのに笑えます。演技力と演出の賜物。

 

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このシーンも2人の逞しさと向こう気の強さが滲み出てて凄く好き。後ろでカメオ出演してる関西民放のアナウンサーはひたすら目障りだったけど。

 

 

そうそう、最後に付け加えておかなければならないこと。

劇場の場所柄か私が見たときはお年を召した観客の方が大半でね。予告が終わっても喋っている人がチラホラいて(年寄りは耳が遠いからヒソヒソ話の音量がデカイ)嫌な感じだなあと思ってたんですが、本編が始まるとおじいちゃんおばあちゃんのリアクションが新鮮で。登場人物たちと年齢的に近いぶん、色々と感じることも多いのでしょう。婚活セミナーのシーンなんかは一緒に盛り上がってる感じがあったりして、非常に良い雰囲気で鑑賞することが出来ました(お年寄りって自虐ネタ好きだよね)

時間や場所に都合が付く方は、そういう客層の上映回を狙って行くのも1つの手かもしれません。

 

というわけで最初から最後まで本当に楽しめたし、劇場の雰囲気も素晴らしくて良い映画体験でした。強いて不満をあげるなら、大画面で見る意義があんまり感じられなかった気がしないでもないけど、樋井明日香さんの清々しいまでの脱ぎっぷりを堪能できたのでそれもよしという、よく分からないまとめで終わりたいと思います。

 

 

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実物、というか本作ではもっと可愛かったです。彼女はエライ。

 

 

オシマイ