『SCOOP!』

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あらすじ:写真週刊誌「SCOOP!」に所属し、数々のスクープ写真を撮ってきたカメラマンの都城静(福山雅治)。しかし、今ではギャンブルに溺れている上に借金に追われつつ、フリーランスのパパラッチとして生活していた。そんな中、「SCOOP!」に配属されてきた新人記者・行川野火(二階堂ふみ)とタッグを組むことに。情報屋のチャラ源(リリー・フランキー)からのネタと場数を踏んできて培ったベテランならではの勘を武器に次々とスクープをものにする静たちだったが、やがて大きな事件に関わることになり……。

 

 

60点

 

 

前半はとても面白かった。超楽しかったしテンション上がる上がる。「これはスゴイ作品かも?」と思ったのに、前半と後半のあまりの落差に唖然としながら劇場を後にしたのでした。

 

良かったところ。

主要な役者陣は全員素晴らしかった。福山雅治二階堂ふみ、吉田羊、リリーフランキー・・。とりわけ主人公・静の、本能の赴くままに生きる男のある種の潔さ。煙草を咥える姿にも華があって、あの夜の街が似合う男感は福山雅治ならではでしょう。またそれが、男女問わず周囲の人を虜にしてしまう色気にも繋がっている。ただ結果的に、この描き方は功罪両面あったのではないかなあ。

 

バクマン』の時もそうでしたが、大根監督は雑誌編集部の描写が秀逸。個々のキャラクターや編集部に漂う生活感。スクープ毎に販売部数が伸び、編集部全体が上昇気流に乗っていく感じ。そして一仕事やり終えた後の一体感と解放感。いずれも見事だったと思いますねえ。

 

実際にスクープを撮りに行くシーンもプロ野球選手、アイドル同士の合コン、政治家と女子穴の不倫(桃パイサイコー)とそれぞれ場所から撮影方法まで面白くて、観客も一緒に楽しめる作り。「こういう手口って実際にありそうだなあ」というモノから、成功したら思わず一緒にガッツポーズしたくなるような爽快感のあるモノまでほんとに楽しかったんですよ、前半は

 

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(大事な事だから2回言いますが桃パイサイコー)

 

だからこそ、後半の展開には心底ゲンナリした

前半とは一変、シリアスな展開になる後半には2つの大きな見せ場があるわけですが、まずどちらも警察が無能すぎ。1つ目なんて四人も殺害している凶悪犯の現場検証で、あんなに警備が杜撰なの有り得ないでしょ。警察のガードが固いみたいな設定になっているのに、馬場(滝藤賢一)は簡単に侵入出来ちゃってるし、おまけに警官にタックルって面白くないしそれ単なる公務執行妨害だから

何より静と野火が自動車置き場でタッグを組む時点で予告編を見ていたら結末が丸分かりというね。後の展開を考えてもここは静と野火の結束感を出すために、真面目にそして丁寧に描くべきシーンだったんじゃないですかね。取って付けたようなベッドシーンを織り交ぜるよりも、このシーンのクオリティを突き詰めましょうよ(ファンサービスのつもりか知らないけど)

 

後半における2つ目の見せ場。これが実質的なクライマックスになるわけですが、銃声がしている現場に丸腰の警官が1人で現れるとか意味不明。警官を含め3人も殺している人間が銃を持って街中を徘徊してるのに、場所を特定するのにどれだけ時間かかるねん。せっかく包囲しても殺人犯への説得や対応はシロウト任せってなにそれ。チャラ源があれだけ執着を見せていた娘を簡単に手放すのも納得できないし、静が娘を説得している間に警察は距離詰めろよ

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見よ、これが烏合の衆とでも言うべき無能軍団だ。

 

劇中、静にとってチャラ源が大事な存在ということを本人の口から何度も聞かされるように、最後に一人で対峙したのは静なりの贖罪のつもりかもしれない。でも親友の事を思うのであればこそ、警察に引き渡すべきじゃないの。もっと言えばクスリをやってると気づいている時点で助けてやれよ

 

さらに追い打ちをかけたのは静が最後に残した一枚の写真。意味ありげに溜めておいて「最後に愛した女の寝顔」ってマジで耳と目を疑った。しかもそれを元妻に言わせるって、この監督はどんな神経してるんだ。その前の展開で「カメラしか取り柄の無かった男の尊厳云々」ともっともらしい事を語らせるなら、あの写真はカメラを持ってこれ以上無いぐらい真剣にチャラ源と対峙する野火の写真であるべきでしょう。それが野火へのメッセージにも繋がるはずなのに、あんな結末では命を賭して親友と対峙した静があの世で泣いてるぜ。

 

ただこれは福山雅治を起用した罪の部分というか、物語が進むほど静というキャラクターの枠を飛び越えて福山雅治の映画になっていく。吉田羊演じる元妻は彼にとって都合の良い存在だし(今でも部屋に通うような間柄ならそもそもなんで別れたんや)、野火も途中からいつでも抱ける便利な女に成り果てる。こういう展開を求めている人もいるのかもしれないけど、それなら最初から「ダメな中年パパラッチ」という設定は要らないんじゃね。

 

色んな要素を詰め込みたかったのは理解できる。しかし、あれもやりたいこれもやりたいと手を出した結果、収拾がつかなくなったものを無理やり纏めこみましたという印象。物語の展開としての前半が素晴らしかっただけに、帰結としての後半の粗雑さが際立ってしまう、残念でならない一本でした。

 

 

オシマイ